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新たなコミュニティ交通「住民バス」の社会実験をサポート

2018/01/31

地域住民の、地域住民による、地域住民のための交通手段、それは「菱野団地住民バス」。自治会主導での運行は日本初!この前代未聞の取り組みを、試行錯誤しながら進めてきた様子をご紹介します。1970年代に開発されたニュータウンでのアクティブシニアの活躍に注目です。

 

社会連携企画部の井原・重根です。今回は愛知県瀬戸市菱野団地で行われた「住民バス」の社会実験についてご紹介します。当社は早稲田大学スマート社会技術融合研究機構と連携して、社会実験におけるマネジメント支援、運行支援、データ収集・分析を行いました。

 

1.ラスト・ワン・マイルの壁

長寿化が進むことは好ましい一方、後期高齢者のQOL(quality of life)の向上も一つの課題として浮上する。若いときは歩けた「あと1~1.5km(ラスト・ワン・マイル)」の道のりや坂道がつらくなる。誰かに頼らないと外出しにくく、出不精になる。その結果QOLの低下につながってしまう。

このような事態を打破しようと、瀬戸市菱野団地の住民が立ち上がった。住民の意思を受け、市が早稲田大学と当社に協力を要請。市・住民・大学が三位一体となって、くらしの足を確保を自分たちで行っていく事業の社会実験を始めた。

菱野団地は1970年代に開発された典型的な郊外型住宅団地である。3つの居住区と中央の商店街からなり、約12,000人が居住している。

2.皆への理解をいかに深めるか

ワークショップを重ねて検討をした後、地域公共交通会議の下部組織として菱野団地コミュニティ交通運行協議会を立ち上げた。運行協議会のメンバーは市役所や自治会役員だけでなく、タクシー事業者(コミュニティバス委託事業者)やバス事業者なども参加し、既存の地域公共交通と新たな地域主導型交通とのネットワーク構築を図った。

ところが、住民の中には反対者がいないわけではなかった。地域主導型交通では、住民のボランティアが運転や運行管理をする。また、運行費の一部は自分たちで負担する。このような住民のコスト負担に対して疑問を持つ人に対しては、住民説明会を実施して丁寧に説明した。説明会では厳しい意見が飛び交うかと思いきや、「こういう仕組みが欲しかった」という住民の声を聞くことができ、住民の不安も軽減し、運行に向けての団結が強まった。


月に1度、運行協議会が開催され、運行計画や改善案などが検討された。

住民説明会の様子。会場内にびっしりと集まった参加者の様子から関心の高さがうかがえる。

 

3.いよいよ!社会実験の開始

地域主導型交通は「住民バス」と呼ばれた。車両は低速電動バスe-COM8と普通乗用車ワンボックスタイプを採用。どちらも普通免許証で運転が可能だ。しかし、車両があるだけでは運行はできない。

まず、運行経路や走行時刻等を示した運行計画が必要だ。市・住民・大学が協力して、運行計画を作成。バス停の位置も決めてバス停を設置した。運輸局や警察への許可もとった。運転ボランティアを募集し、運転練習も行った。

こうして、7月11日から実走が始まった。1日5便。日祝日が運休の週5日運行。朝の7時から14時まで、菱野団地内を2台の住民バスがぐるりと回り始めた。

低速電動バスeCOM-8。最高時速19km。車内はベンチ型で会話が弾む。窓がないのが長所でもあり短所でもある。10人乗り。

普通乗用車ワンボックスタイプ。eCOM-8に合わせて時速19kmで走行する。10人乗り。

 

少しでも多くの人に住民バスを知ってもらい、乗ってもらいたい。高齢者だけでなく子供たちやその親にも。そのような思いを持って、運行前の休日には住民バスの出発式を実施した。団地中央の商店街にある広場を電動バスが一周する光景はまるで遊園地のアトラクションのよう。地域で活動するNPOやバス業者もバザーや食べ物のブースを出すなどして集客に協力をしてくれ、親子連れやお年寄りでにぎわった。

実走中には幼稚園帰りの親子連れが住民バスに乗ってくれるようになった。ゆっくり走る住民バスなので、運転手も走行しながら歩行者に「乗っていきませんか」と声をかけ、当初は女性客が多かったが、しばらくすると男性客も乗るようになってきた。住民バスは高齢者だけでなく、みんなの住民バスになったのだ。

住民バスに乗ってみたい人が列を作る。住民バスに乗車するにあたり、登録カードを作成する。

住民バスの試乗会。ビブスを着ているのが運転ボランティア。住民バスの紹介をしながら広場を一周。

 

4.PDCAを回す。ルートと時刻の変更

7月から運行を始めて2か月が経ち、徐々に住民のニーズがわかってきた。バスに乗って病院に行くより中央の商店街への買い物客が多い、今のルートでは団地が周遊していないため利用しにくいなど。また、電動バスと普通乗用車の長所短所もはっきりしてきた。そこで、10月にルートと運行時刻の変更を行った。1日5便は変わらないが、始発を9時台に変更した。運行負担を軽減するため、運転ボランティアが集まりにくい水曜日も運休にして週5回にした。しかし、乗降データでは曜日による利用者数の差はさほどなかったため水曜日にしたのだが、実は水曜日に公民館でサークル活動があったこと、商店街の荷物配送サービスデイだったことが改正後に判明した。女性のニーズをもっと吸い上げておくべきだったかもしれないと、地域のおじさんたちはぼやいた。

 

曜日別利用者数(7月~9月)(人)

時間別利用者数(7月~9月)(人)1便7:50~、2便9:05~、3便10:10~、4便11:50~、5便13:20~

5.本格運行に向けて

12月26日が社会実験の最終運行日だった。しかし、この日が運行の終わりではない。住民は次年度の本格運行に向け、意気込みを新たにしていた。12月に行われた運行協議会では、市と大学・当社が作成した運行計画案をもとに、本格運行の準備が始まろうとしていた。

利用客は徐々に増加していったし、感謝もされた。運転ボランティアと運行協議会メンバーは確かな手ごたえを感じていた。彼らは、住民バスは単に人を運ぶ手段ではなく、人と人の対話・交流があるコミュニティ形成の場としてとらえるようになっていた。

同時期、菱野団地では住宅団地再生モデル計画が立ち上がった。住民バスの運行は人の対流を生み出し、新しい菱野団地づくりに向けて、ますます重要な役割を果たすようになっていくだろう。

住民バスの一日あたり利用者数の推移。一日あたり40~50人の利用がある。

住民バスに乗って行きたくなる商店街を目指したい。住宅団地再生計画とのコラボレーションが期待される。

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